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第374回 愛ある前衛「安井仲治 僕の大切な写真」

”土門拳が絶賛したという写真家が安井仲治--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。指の次は腰も痛めてしまい悶絶している宮澤やすみです。だいぶ前から腰椎ヘルニアだったのが臨界になって痛みだしたようです。

そんな中、東京ステーションギャラリーで開幕した「安井仲治 僕の大切な写真」の取材にいってきました(この時はふつうに歩けた)。
写真は報道内覧会で特別に許可を得て撮影したものです。


展示風景

仏像ファンにとって有名な写真家といえば土門拳があげられますが、その土門拳が絶賛したという写真家が安井仲治(やすいなかじ)。

明治生まれで大正、昭和前期に活躍した写真家で、現在の写真芸術の先駆といってもよいかと思います。
詳しくは、展覧会サイトや写真界隈の人たちがネットで書いてらっしゃるのでそれを見ていただくとして、その作品は、前衛的な構成の作品が有名です。
でもそれ以外にも市井の人を撮ったポートレートあり、迫害を逃れてきたユダヤ人を記録したりなど、そのジャンルは多岐にわたります。ただどれを撮ってもどこか不思議な構図だったり独特の空気感があるんですよね。


展示風景より《馬と少女》 展覧会のメインヴィジュアルになっている名作

やはり展示作品は前衛写真が目を引きますけど、ただ奇抜さを狙ったのではなく、作品一つ一つに安井の感情や思いが込められているようで、鉄粉とかトンカチとか無機的なものにも慈しみをもって接しているような気がします。
「はーい、きれいに撮るからねー」とトンカチに話しかける安井さんの様子を(勝手に)想像します。


展示風景より《磁力の表情》シリーズ 磁石で鉄粉をさまざまな形にして撮影

こんな斬新な作品をおよそ100年前の人が作っていたというのが驚きですね。
もちろん、当時は完全にアナログ作業。フィルムを光に透かして見たうえで、切ったり貼ったり、現像やプリントの薬液の微妙な加減を調整したり、ぜんぶ手作業で作り上げる。

土門拳もですけど、この時代の写真家は、写真という新しいメディアにのめり込み、さまざまな制作実験をしたことでしょう。なかでも大正時代から写真を撮り始めた安井仲治はその最初期の人。仏像でたとえれば、当時最新の技法で造られた興福寺の阿修羅像とかでしょうかね?


展示風景より《即興》

そうした写真技術を磨きに磨いたうえで、何をどのように、なぜ撮るのか、そういう点、つまり作品に想いを載せるという点に安井ならではの感性が光っているようです。だから奇抜な前衛写真も心を感じるんでしょうか。

それにしても、まだ報道写真とかファッション写真とか職業としてのカメラマンがほとんど存在しなかった時代に、これだけの先鋭的な写真を世に出してきた安井仲治の感性に、写真が専門ではない私でも圧倒されます。


展示風景より《看板》 個人的に一番気に入った作品

今はデジタルでいくらでもデータをいじることができるわけですが、僕なんか無計画にいじりすぎて何が正解か分からなくなったりしますもんね。やはり最初のコンセプトメイキングが大事です。


展示風景より《月》38歳で病没する安井仲治の最晩年の作品はまるで禅の境地。その心境はいかに

誰でも自由に写真を撮れる現代、写真の価値や可能性が再発見できるのではないでしょうか。

それでは聴いてください。
デフ・レパードで「Photograph」。



生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真
2024年2月23日(金・祝) - 4月14日(日)
毎週月曜休館(4/8は開館)
東京ステーションギャラリー
詳細 
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202402_yasui.html



--おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

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 4.川のほとりで
 5.Benzai-Tennyo
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 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m