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第382回 仏像も見ごたえあり「法然と極楽浄土」展
”かなりはっちゃけたキャラクターデザインで－－”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。東京・両国のライブハウスに出演を控えた宮澤やすみです。パンク系のバンドも出るなか私は江戸の小唄を静かに。温度差すごい。目を付けたオーガナイザーのセンスすごい。
そんな中、春は美術展がたくさん開幕。東京国立博物館での特別展「法然と極楽浄土」を取材してきました。
写真は報道内覧会で許可を得て撮影したものです。
展示風景。法然さんがお出迎え
法然は浄土宗の開祖。令和6年（2024）は浄土宗の開宗850年にあたります。
これを機に、法然の教えの成り立ちから、その後の弟子による展開、徳川幕府による江戸時代の発展までの歴史をたどります。
法然の浄土宗といえばナムアミダブツの宗派。
南無阿弥陀仏と唱えることで救われるという教えで、その本尊は阿弥陀如来です。
《阿弥陀如来立像》鎌倉時代13-14世紀 岡山 誕生寺
仏像ファン目線でいうと、浄土宗は阿弥陀如来とその脇侍・観音菩薩と勢至菩薩を加えた三尊が中心で、それ以外の仏像は展示されるのか？
あとは法然ほか高僧の像ばかりなのか？ まあそれはそれで、かわいいおじさんも女子に好かれるというし、どうなんでしょう。
そこが一抹の不安というか、気になるところでした。
ところが、
さすがトーハク、ご信徒さん以外の人も楽しめる（もちろん学びもある）、仏像世界が広がっていて、広い平成館も飽きずに鑑賞できました。
展示前半は、法然と阿弥陀仏の紹介。静謐な佇まいの三尺阿弥陀に心洗われます。
そもそも三尺（約90cm）という像高のゆえんは、発願者が臨終の際、傍らに置いて極楽往生を願うためのものだそう。コンパクトなサイズが求められたのです（それでもそれなりの大きさはありますが）。
横から見ると、片足を半歩出して、前のめりに身を乗り出して、「救いに来た」という感じがよく伝わります。
横から見たようす《阿弥陀如来立像》鎌倉時代13-14世紀 岡山 誕生寺
そんな浄土信仰の王道を学んだあとは、あの京都・知恩院の経蔵にある八天像のうち四天がおでまし。
写真のとおり、かなりはっちゃけたキャラクターデザインです。なにこの「がきデカ」みたいなポーズ。
「さあ急げ！」「がってんだ！」とセリフが聞こえるようだが、この像の役目は？ 《八天像》より金剛力士と密迹力士 元和7年 京都・知恩院蔵
これは、回転させてお経を読んだこととする「輪蔵」を一生懸命押しているポーズなんだそう。だから腕をつっぱっているのですね。
「ちょっと待て！」「えっ！？」とセリフが聞こえるようだが、実際は輪蔵を回そうとしているのだ。《八天像》より帝釈天と持国天 元和7年 京都・知恩院蔵
展示のラストは、香川・法然寺の三仏堂（涅槃堂）の釈迦涅槃像とそれを取り囲む群像が壮観なスケールで再現。思ったより大きくて圧倒されます。ここは一般写真撮影OK。
《仏涅槃群像》より 江戸時代・17世紀 香川・法然寺蔵
なにしろ動物たちが釈迦を心配そうに見守る様子がカワイイ！
心配そうに釈迦を見る龍がかわいい。《仏涅槃群像》より 江戸時代・17世紀 香川・法然寺蔵
一見地味な印象の「法然と極楽浄土」展で、もちろん法然と浄土宗の歴史を学ぶのが本筋ですが、実際は仏像ファンがニンマリと楽しむこともできてしまう。懐の深い展示でした。
仏像以外にも、国宝「綴織當麻曼陀羅」「阿弥陀二十五菩薩来迎図（早来迎）」といった国宝仏教美術も目を見張るものがありました。
阿弥陀信仰自体は古くから日本に伝わっている。奈良時代の阿弥陀浄土曼荼羅を鎌倉時代の浄土宗僧・証空が再評価し篤く崇敬した。国宝《綴織當麻曼陀羅》唐または奈良時代・8世紀 奈良・當麻寺蔵
ほかにも注目した点があるので、この連載でまた書きます（次週は別の話題になります）。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「むかにきたよ」。
特別展「法然と極楽浄土」
東京国立博物館 平成館
2024年4月16日（火）～2024年6月9日（日）
以降、京都、九州へ巡回
詳細
（東京国立博物館）
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2629
（公式HP）
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/honen2024-25/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
１．
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです（CDも付いてます）。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲：
１．Fantastic Dystopia
２．一木造
３．Shami on The Water
４．川のほとりで
５．Benzai-Tennyo
６．Black Etenraku
７．北斗星
８．いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト：http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター：https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。東京・両国のライブハウスに出演を控えた宮澤やすみです。パンク系のバンドも出るなか私は江戸の小唄を静かに。温度差すごい。目を付けたオーガナイザーのセンスすごい。
そんな中、春は美術展がたくさん開幕。東京国立博物館での特別展「法然と極楽浄土」を取材してきました。
写真は報道内覧会で許可を得て撮影したものです。
展示風景。法然さんがお出迎え
法然は浄土宗の開祖。令和6年（2024）は浄土宗の開宗850年にあたります。
これを機に、法然の教えの成り立ちから、その後の弟子による展開、徳川幕府による江戸時代の発展までの歴史をたどります。
法然の浄土宗といえばナムアミダブツの宗派。
南無阿弥陀仏と唱えることで救われるという教えで、その本尊は阿弥陀如来です。
《阿弥陀如来立像》鎌倉時代13-14世紀 岡山 誕生寺
仏像ファン目線でいうと、浄土宗は阿弥陀如来とその脇侍・観音菩薩と勢至菩薩を加えた三尊が中心で、それ以外の仏像は展示されるのか？
あとは法然ほか高僧の像ばかりなのか？ まあそれはそれで、かわいいおじさんも女子に好かれるというし、どうなんでしょう。
そこが一抹の不安というか、気になるところでした。
ところが、
さすがトーハク、ご信徒さん以外の人も楽しめる（もちろん学びもある）、仏像世界が広がっていて、広い平成館も飽きずに鑑賞できました。
展示前半は、法然と阿弥陀仏の紹介。静謐な佇まいの三尺阿弥陀に心洗われます。
そもそも三尺（約90cm）という像高のゆえんは、発願者が臨終の際、傍らに置いて極楽往生を願うためのものだそう。コンパクトなサイズが求められたのです（それでもそれなりの大きさはありますが）。
横から見ると、片足を半歩出して、前のめりに身を乗り出して、「救いに来た」という感じがよく伝わります。
横から見たようす《阿弥陀如来立像》鎌倉時代13-14世紀 岡山 誕生寺
そんな浄土信仰の王道を学んだあとは、あの京都・知恩院の経蔵にある八天像のうち四天がおでまし。
写真のとおり、かなりはっちゃけたキャラクターデザインです。なにこの「がきデカ」みたいなポーズ。
「さあ急げ！」「がってんだ！」とセリフが聞こえるようだが、この像の役目は？ 《八天像》より金剛力士と密迹力士 元和7年 京都・知恩院蔵
これは、回転させてお経を読んだこととする「輪蔵」を一生懸命押しているポーズなんだそう。だから腕をつっぱっているのですね。
「ちょっと待て！」「えっ！？」とセリフが聞こえるようだが、実際は輪蔵を回そうとしているのだ。《八天像》より帝釈天と持国天 元和7年 京都・知恩院蔵
展示のラストは、香川・法然寺の三仏堂（涅槃堂）の釈迦涅槃像とそれを取り囲む群像が壮観なスケールで再現。思ったより大きくて圧倒されます。ここは一般写真撮影OK。
《仏涅槃群像》より 江戸時代・17世紀 香川・法然寺蔵
なにしろ動物たちが釈迦を心配そうに見守る様子がカワイイ！
心配そうに釈迦を見る龍がかわいい。《仏涅槃群像》より 江戸時代・17世紀 香川・法然寺蔵
一見地味な印象の「法然と極楽浄土」展で、もちろん法然と浄土宗の歴史を学ぶのが本筋ですが、実際は仏像ファンがニンマリと楽しむこともできてしまう。懐の深い展示でした。
仏像以外にも、国宝「綴織當麻曼陀羅」「阿弥陀二十五菩薩来迎図（早来迎）」といった国宝仏教美術も目を見張るものがありました。
阿弥陀信仰自体は古くから日本に伝わっている。奈良時代の阿弥陀浄土曼荼羅を鎌倉時代の浄土宗僧・証空が再評価し篤く崇敬した。国宝《綴織當麻曼陀羅》唐または奈良時代・8世紀 奈良・當麻寺蔵
ほかにも注目した点があるので、この連載でまた書きます（次週は別の話題になります）。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「むかにきたよ」。
特別展「法然と極楽浄土」
東京国立博物館 平成館
2024年4月16日（火）～2024年6月9日（日）
以降、京都、九州へ巡回
詳細
（東京国立博物館）
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2629
（公式HP）
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/honen2024-25/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
１．
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです（CDも付いてます）。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲：
１．Fantastic Dystopia
２．一木造
３．Shami on The Water
４．川のほとりで
５．Benzai-Tennyo
６．Black Etenraku
７．北斗星
８．いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト：http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター：https://twitter.com/yasumi_m
