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第272回 信仰と文化財の間で-下関・彦島ペトログラフ探訪 その2

”きっと今も神霊石として怖れ敬っている人がいるのだと--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。「仕事が減ったのをいいことに自宅で曲作り」と書きましたが、こんどは曲のアイデアができすぎて多忙を極めている宮澤やすみです。貧乏暇ナシ。

さて、ここ数回は、九州は熊本、小倉から下関へ足を延ばしています。

前回記事では、下関の西端にある彦島八幡宮を訪れ、「彦島ペトログラフ」について紹介しました。
判読不能の線刻が刻まれたナゾの石は、古代文明の痕跡とも、祟り岩とも呼ばれています。

話はつづきます。

ここ彦島にはこのような線刻が刻まれた大きな石がいくつもあり、下関市指定文化財の「彦島杉田岩刻画」が良く知られます。
これについて神社の方に尋ねると、バスを乗り継いで丘の上(杉田丘陵)にあるとのこと。

時刻表を調べながら、太川陽介の気分でローカル路線バス乗り継ぎの旅。
ぶらり途中下車して彦島のようすを見ながら歩きます。


途中で見かけた水門は、世界最小のパナマ運河式水門としてギネス認定。「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」認定。水路は50メートル、幅8メートルで、昭和11年設置

だらだら続く坂を上りきって、新しい団地が出来ているところの裏手に行くとありました。


巨石がごろごろする中、柵が設けられている石に線刻画が見られた

この四角い石の表面に、〇と曲線で人物のような形と幾何学的な文様が彫りつけられていたそうです。
事前にネットで見たところ、くっきりした線があって期待したのですが、残念、、
すでに風化して、ほとんど線は残っていませんでした。


残念ながら、もうどこから見ても線刻は判別できません。分かる人にはわかるんでしょうか

地元の方のブログで、調査したときの画像(線刻がはっきりわかる)が出てるので参考になります
彦島杉田岩刻画(ペトログラフ)
http://www.hikoshima.com/vestige/petrography/index.htm

調査によると、この文様は九州の有明海沿岸に残る装飾古墳のデザインに似ているそうです。
つまりこの石も、古墳の石室の一部だったのではないかと言われています。
九州の装飾古墳文化が、本州の下関にも及んでいたという。確かにここは九州と接している地域なので奇異なことではないと思います。


周囲にもゴツゴツした石がいくつもあり、いわゆる”古墳のニオイ”がします

この石が最初からここにあったのかどうか不明で、いろんなタイミングで誰かがここに置いたか発掘したか、なにかあったかもしれません。
一説には、平知盛が壇ノ浦の決戦に際して彦島城を築こうとした痕跡だとも言われます。


四角く平たい形状は、古代の人が加工したものか?

ここ彦島は平家の里といわれ、壇ノ浦の合戦で平家にまつわる伝説があるところ。
この石も、平家がらみの歴史ミステリーや落人の怨念、呪いなど、さまざまな言説が込められています。

さらに、杉田岩刻画の位置からよく見える三角錐の山が「彦島ピラミッド」と呼ばれ、超古代ミステリーが好きな人たちの注目をも集める場所です。ピラミッドの山麓にも巨石があるそう。
私もわりと巨石とか古代文明とかいう話が好きなほうなので、わざわざ訪れた次第。


画面中央のこんもりした山が”彦島ピラミッド”。この眺望から、ここ杉田丘陵はピラミッドの遥拝所だったという説も

ただ、こういうのはファンタジーとして楽しむのが良いんですよね。
ここは管理が手薄なようで、柵はあるものの手を伸ばせば触れそうだし、こんな注意書きもあるくらいだから(写真)、個人的な想いでいろんな接し方をする方がいることでしょう。
それが風化を早めた一因かもしれません。


わざわざこんな注意書きがあるということは、よっぽど言っても聞かなかったんでしょう

前回の記事でご紹介したように、これらの線刻石が、「祟り」とか「パワー」といったような神霊が宿る信仰の対象として捉えられてきた経緯があります。
そこへ、あとから「じつは古墳の石室だった」と言われても、信心は理屈を超えて根深いもの。きっと今も神霊石として怖れ敬っている人がいるのだと思います。

ネットで調べた限りでも、この石に盛り塩をする地元のおばあさんがいるとか。
こうした人にとっては、線刻の重要性よりも、石そのものの霊験を信仰しているのではないでしょうか。それを外部の人間が「バカバカしいからやめなさい」といっても、聞く耳もたず、逆に意固地になることでしょう。

仏像もそうですが、古代の石とか古墳とかでも、まあ中には過剰な接し方をする人もいますからね。

ここまで書いて思い出したのが、東京都内の古墳でも時々見かけた謎の団体さん。
墳丘上で古代風の衣装を着てナゾの舞や儀式を一生懸命していました。さすがにびっくりして、なるべく目を合わせないよう静かに通り過ぎたものでした。

この場合、ナゾの儀式自体はご自由になさっていただければいいんですけど、もし石や木や彫刻など、形あるものを壊すようなことがあるとしたら控えていただきたいものです。

自然の風化は仕方ないですが、歴史遺物、考古資料を後世に残すためにも、丁寧に扱いたいものですね。

というわけで、いつか「彦島ピラミッド」にも行ってみたいと思います(結局好きだということで)


それでは聴いてください。
ザ・ローリング・ストーンズで「ブラウン・シュガー(LIVE)」。


この滞在は、活動写真弁士・片岡一郎さん(前々回連載を参照)の九州公演ツアーに、三味線奏者として同行したものでした。熊本に続いて、小倉市内の伝統ある映画館・小倉昭和館さんにて、サイレント映画を片岡氏の活弁と私の生演奏で上演しました。


映画スクリーン横で三味線をスタンバイ。無声映画に合わせて演奏します


参考
彦島杉田岩刻画(下関市指定有形文化財(考古資料))|下関市
http://www.city.shimonoseki.lg.jp/www/contents/1614910532892/index_k.html

過去記事
浜松・ナゾの巨石群へ 天白磐座遺跡
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20210427-2/


---おしらせ---

(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
(オンライン配信あり)
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2.
日本書紀を歌った新作MV「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ


宮澤やすみYoutubeチャンネル
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