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第273回 肝の据わった美・比叡山の横川観音と向き合う-特別展「最澄と天台宗のすべて」九州展-

”これはガラスなしの間近な展示だからこそわかるものでした--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。今回の取材のために初めてPCR検査を受け、無事陰性だった宮澤やすみです。

さて、ここ数回九州からの話が続きました。
今回も九州しかも仏像どまんなかのお話です。記事末に360度動画もあります。

訪れたのは、九州国立博物館。
2月8日から開幕する特別展「最澄と天台宗のすべて」の取材で報道内覧会におじゃましました。
(写真はすべて特別に許可を得て撮影)


東京展に登場しなかった、今回展示の主役。《聖観音菩薩立像 滋賀・延暦寺蔵 平安時代・12世紀》

この連載では、秋に東京国立博物館でのようすを紹介しました。
この特別展は、東京、九州、京都と巡回する大規模展で、それぞれ展示内容が変わります。

今回の展示で大変期待していたのが、こちら。
比叡山延暦寺所蔵の聖観音菩薩立像。


展示の前半にいきなりお出ましになります

延暦寺は比叡山の上におおまかに3つの拠点があります。そのうちの「横川(よかわ)」という区域の本堂「横川中堂」の本尊。


延暦寺・横川中堂。2017年来訪時に撮影

延暦寺でも横川中堂の中で本尊を拝観できますが、
暗がり、遠目、厨子の中
という、3点揃った見えづらさ。シルエットだけのお姿は、神秘性が増して礼拝には良いのですが、いつか間近に見る機会をと待っていました。

平安時代12世紀の作で、優しい表情、髪の毛の結い上げ方が低く、衣の衣文線があっさりと浅く表現されて、とにかくすべてが柔和。まさしくこの時代の作風のお手本のような造りと言われます。


優しいお顔を見ているとこちらがとろけてしまいそう

たしかにその通りですが、今回間近に見ると、衣文の彫り具合が思ったより深くしっかり彫刻してあって、腰の量感もたっぷり。そうした点は12世紀より前の力強い作風を踏襲してるようにも感じます。
これはガラスなしの間近な展示だからこそわかるものでした。


台座下部には華麗な文様が彫られている。奈良時代の像によく見られる

力強さを秘めた美は、身体のフォルムにも表れているようでした。
脚を前に出して腰をひねるポーズ。これは、本尊の脇侍としての姿でよく見られますが、これは中央に立つ本尊。つまり主役。

かなり強い腰のひねりが見られるものの、正面から見ると中心線がピシッと決まっていて、横の誰かによりかかるような感じはなく、自分の芯が出来ているというか、肝の据わったような印象をもちます。


横から見ると、観音菩薩によくある前のめりの姿勢が顕著に見えます

ちなみに図録によると、この観音像の脇には毘沙門天と不動明王が安置されます。横川を開いた円仁の帰朝を毘沙門天が助けた逸話と、良源が不動明王を置いたことによります。
この観音、毘沙門、不動の三尊形式も、ここ横川が根本なのだそうです。

そういえば、私が音楽活動でもお世話になっている東京・人形町の大観音寺も、観音を中心に毘沙門、不動が祀られていて、どうしてかなと思ったら原点は横川中堂なのでした。

さて、観音像の手のポーズにも注目します。左手に持った蓮華に、右手をそっと近づけるポーズ。
これが天台宗系の観音像の規範となって、全国に広まっていったそうです。


蓮の花に右手を向けるポージングが、その後さかんに模倣されたそうです

天台宗の観音信仰の根本像であるのが、この横川中堂の観音。博物館で間近に見ることができて本当によかったです。


頭上の化仏もよく見える

次回は、九州会場限定の展示を紹介します。

こちらは観音をぐるり一周拝観する動画です(36秒)。



それでは聴いてください。
プリンスで「ビューティフル・ワン(The Beautiful Ones)」。



特別展「最澄と天台宗のすべて」(九州会場)
2022年2月8日(火)~3月21日(月祝)月曜休館
九州国立博物館
詳細は公式サイトへ
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/saicho2021-2022/
(巡回:4月12日から京都国立博物館)


(東京会場の過去記事)
特別展「最澄と天台宗のすべて」まるで恐怖の魔王?元三大師
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211019-2/

(参考)
横川(よかわ)|境内案内|天台宗総本山 比叡山延暦寺
https://www.hieizan.or.jp/keidai/yokawa



---おしらせ---

(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
2022/3/2(水)19:00開演
上野広小路/御徒町 ワロスロード・カフェ

活動弁士・山内菜々子さんをお呼びして珍しいサイレント映画の短編を生演奏付きで上演。
後半はこれまた珍しい昭和初期の流行歌を弾き歌い。
感染防止対策準拠。落ち着いたくつろぎ空間で疲れを癒してください

シックなバーでのミニライブ。オンライン配信も予定してます。Youtube宮澤やすみチャンネルにて


2.
(オンライン配信あり)
■魅惑の仏像:造る、見る、拝む トークショー

観賞用仏像「イスム仏像」のブランドマネージャーをお招きして、
仏像の「造る」「見る」「拝む」を語る仏像トーク。遠方の方はオンラインで。
https://www.ync.ne.jp/jiyugaoka/kouza/202201-18010097.htm
よみうりカルチャー自由が丘


3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)



宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m