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第274回 六郷満山の「太郎天」と童子たち-特別展「最澄と天台宗のすべて」-
”古来、日本では童子は神聖な存在とされてきました。いっぽう--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。春に向けて音楽出演の準備が始まっている宮澤やすみです。仏像ファンの方も、音楽にもご注目いただけたらうれしいです。
前回は、特別展「最澄と天台宗のすべて」九州会場から、比叡山延暦寺の聖観音菩薩立像を紹介しました。
このほか、”天台展”九州会場での注目は、六郷満山(ろくごうまんざん)信仰です。
大分県の国東半島は古くから山岳信仰の道場であり、そこへ宇佐八幡宮(奈良の仏教と密接につながりがあった)の影響で、早くから都の最新の仏教が伝わると、天台宗系の修行の場として発展しました。
重要文化財 太郎天および二童子立像 平安時代・大治5年(1130)大分・長安寺蔵
今回の展示では、そこに残る長安寺蔵の《太郎天および二童子立像》も見逃せない像のひとつです。
かわいいと評判の童子像です。
もともと、この地の六所権現社の神像だったのが、明治の神仏分離で長安寺に安置されたというもの。
髪型はみずらを結い、りりしい童子の姿ですが、じつは胎内の墨書により、この童子像は不動明王三尊になぞらえて造られたものとわかりました。
厳しいお顔をしている太郎天。不動明王の剣のかわりに杖を、羂索のかわりに小枝をもつ
文句なしにかわいいのがこちらの童子。「ボクがお守りします!」と健気に付き従う
古来、日本では童子は神聖な存在とされてきました。いっぽう、不動明王も本来その姿とくに体つきは童子形とされるので、共通点があります。
六郷満山の厳しい山岳修験の世界では、不動明王が崇敬されてきましたが、その神像的なアプローチとして太郎天が存在する、まさしくこの地ならではの神仏習合的な像なのです。
反対側の童子は小鬼の姿。その意味は明らかでない
この記事末に、参考URLを貼ってあるので後でご覧ください。
急峻な山の中にある長安寺境内(2016年撮影)。厳しい山岳修行をする行者を護るとされる
会場では、太郎天のほかに六郷満山ゆかりの像が何体も展示されています。
こちら、大分・大楽寺の菩薩立像は、都ぶりの均整の取れた作風ですが、これは宇佐八幡宮を経由して六郷満山が天台宗の拠点になった11世紀頃の造像といわれます。宇佐八幡宮にあった弥勒寺(神仏習合時代は神社境内にお寺があった)に天台宗勢力が進出した時代です。
重要文化財 菩薩立像 平安時代11世紀 大分・大楽寺蔵
個人的に、この九州展は前回紹介した観音さまをはじめとして、東京会場でお目にかかれなかった像がいくつもあり気になっていました。そんなわけで今回交通費を工面し、PCR検査で陰性を確認し、九州まで赴いた次第です。
帰りは、福岡名物のやわらか~いうどんを食べるのも私のルーティンであります。
以前からうどんは柔らかいのが好きでしたが、最近は雑誌でも取り上げられていよいよ博多うどんブームのきざしでしょうか?
「牧のうどん」のごぼ天肉うどん
それでは聴いてください。
マウンテンで「ミシシッピ・クイーン」。
特別展「最澄と天台宗のすべて」(九州会場)
2022年2月8日(火)~3月21日(月祝)月曜休館
九州国立博物館
詳細は公式サイトへ
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/saicho2021-2022/
(巡回:4月12日から京都国立博物館)
「天台展」関連の過去記事
九州会場:
肝の据わった美・比叡山の横川観音と向き合う
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220208-2/
東京会場:
まるで恐怖の魔王?元三大師
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211019-2/
(参考)
仏像?神像?不思議な太郎天の謎について|豊後高田市HP
https://www.city.bungotakada.oita.jp/page/page_03462.html
---おしらせ---
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
2022/3/2(水)19:00開演
上野広小路/御徒町 ワロスロード・カフェ
活動弁士・山内菜々子さんをお呼びして珍しいサイレント映画の短編を生演奏付きで上演。
後半はこれまた珍しい昭和初期の流行歌を弾き歌い。
感染防止対策準拠。落ち着いたくつろぎ空間で疲れを癒してください
シックなバーでのミニライブ。オンライン配信も予定してます。Youtube宮澤やすみチャンネルにて
2.
(オンライン配信あり)
■魅惑の仏像:造る、見る、拝む トークショー
観賞用仏像「イスム仏像」のブランドマネージャーをお招きして、
仏像の「造る」「見る」「拝む」を語る仏像トーク。遠方の方はオンラインで。
https://www.ync.ne.jp/jiyugaoka/kouza/202201-18010097.htm
よみうりカルチャー自由が丘
3.
日本書紀を歌った新作MV「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。春に向けて音楽出演の準備が始まっている宮澤やすみです。仏像ファンの方も、音楽にもご注目いただけたらうれしいです。
前回は、特別展「最澄と天台宗のすべて」九州会場から、比叡山延暦寺の聖観音菩薩立像を紹介しました。
このほか、”天台展”九州会場での注目は、六郷満山(ろくごうまんざん)信仰です。
大分県の国東半島は古くから山岳信仰の道場であり、そこへ宇佐八幡宮(奈良の仏教と密接につながりがあった)の影響で、早くから都の最新の仏教が伝わると、天台宗系の修行の場として発展しました。
重要文化財 太郎天および二童子立像 平安時代・大治5年(1130)大分・長安寺蔵
今回の展示では、そこに残る長安寺蔵の《太郎天および二童子立像》も見逃せない像のひとつです。
かわいいと評判の童子像です。
もともと、この地の六所権現社の神像だったのが、明治の神仏分離で長安寺に安置されたというもの。
髪型はみずらを結い、りりしい童子の姿ですが、じつは胎内の墨書により、この童子像は不動明王三尊になぞらえて造られたものとわかりました。
厳しいお顔をしている太郎天。不動明王の剣のかわりに杖を、羂索のかわりに小枝をもつ
文句なしにかわいいのがこちらの童子。「ボクがお守りします!」と健気に付き従う
古来、日本では童子は神聖な存在とされてきました。いっぽう、不動明王も本来その姿とくに体つきは童子形とされるので、共通点があります。
六郷満山の厳しい山岳修験の世界では、不動明王が崇敬されてきましたが、その神像的なアプローチとして太郎天が存在する、まさしくこの地ならではの神仏習合的な像なのです。
反対側の童子は小鬼の姿。その意味は明らかでない
この記事末に、参考URLを貼ってあるので後でご覧ください。
急峻な山の中にある長安寺境内(2016年撮影)。厳しい山岳修行をする行者を護るとされる
会場では、太郎天のほかに六郷満山ゆかりの像が何体も展示されています。
こちら、大分・大楽寺の菩薩立像は、都ぶりの均整の取れた作風ですが、これは宇佐八幡宮を経由して六郷満山が天台宗の拠点になった11世紀頃の造像といわれます。宇佐八幡宮にあった弥勒寺(神仏習合時代は神社境内にお寺があった)に天台宗勢力が進出した時代です。
重要文化財 菩薩立像 平安時代11世紀 大分・大楽寺蔵
個人的に、この九州展は前回紹介した観音さまをはじめとして、東京会場でお目にかかれなかった像がいくつもあり気になっていました。そんなわけで今回交通費を工面し、PCR検査で陰性を確認し、九州まで赴いた次第です。
帰りは、福岡名物のやわらか~いうどんを食べるのも私のルーティンであります。
以前からうどんは柔らかいのが好きでしたが、最近は雑誌でも取り上げられていよいよ博多うどんブームのきざしでしょうか?
「牧のうどん」のごぼ天肉うどん
それでは聴いてください。
マウンテンで「ミシシッピ・クイーン」。
特別展「最澄と天台宗のすべて」(九州会場)
2022年2月8日(火)~3月21日(月祝)月曜休館
九州国立博物館
詳細は公式サイトへ
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/saicho2021-2022/
(巡回:4月12日から京都国立博物館)
「天台展」関連の過去記事
九州会場:
肝の据わった美・比叡山の横川観音と向き合う
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220208-2/
東京会場:
まるで恐怖の魔王?元三大師
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211019-2/
(参考)
仏像?神像?不思議な太郎天の謎について|豊後高田市HP
https://www.city.bungotakada.oita.jp/page/page_03462.html
---おしらせ---
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
2022/3/2(水)19:00開演
上野広小路/御徒町 ワロスロード・カフェ
活動弁士・山内菜々子さんをお呼びして珍しいサイレント映画の短編を生演奏付きで上演。
後半はこれまた珍しい昭和初期の流行歌を弾き歌い。
感染防止対策準拠。落ち着いたくつろぎ空間で疲れを癒してください
シックなバーでのミニライブ。オンライン配信も予定してます。Youtube宮澤やすみチャンネルにて
2.
(オンライン配信あり)
■魅惑の仏像:造る、見る、拝む トークショー
観賞用仏像「イスム仏像」のブランドマネージャーをお招きして、
仏像の「造る」「見る」「拝む」を語る仏像トーク。遠方の方はオンラインで。
https://www.ync.ne.jp/jiyugaoka/kouza/202201-18010097.htm
よみうりカルチャー自由が丘
3.
日本書紀を歌った新作MV「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m