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第341回 まるで四天王な雅楽の装束/釈迦涅槃図の修復
”古代中国の英雄と強靭な四天王のイメージが重なる--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。芸人の千原せいじさんのYoutubeチャンネルにおじゃましました宮澤やすみです。この連載を見て連絡をくださったそうで、誰も読んでないだろと思っていたけどいちおう役立っているみたいです。
そんな中、今回はふたつの話題をおとどけします。
1.
まず先日は雅楽の演奏会にいってきました。
雅楽を一般の愛好者向けにコンサート会場で演奏している「博雅会」さんの定期演奏会で、毎回うかがっています。
これは前座さんの上演。ここだけ撮影OKでした。「太平楽」のほうは4人の力強い群舞が派手でした
今回の演目は「太平楽」という長大な組曲で、それを全曲やりました。
これのみどころは舞でして、古代中国の項羽と劉邦のエピソード「鴻門の会」を題材にした舞楽です。
四人による舞は、中国の勇壮な武人をモチーフにしていてとても力強いものでした。
矛を持ち、大地を踏みしめて力強く舞うもので、「全曲通すと何キロも痩せる」とプログラムに書いてあるくらい、激しいものです。
注目したのは、その装束です。
写真を撮らせてもらいましたが、これほとんど仏像の四天王ですよね。
手作りだそうですが、かなり精巧に造られている。古くから「太平楽」用の装束は”別装束”として伝承されている
口を開いた怪獣の形をした「肩喰(かたくい)」。この方の場合は竜でしょうか。
ベルトの部分の「帯喰(おびくい)」は、この写真の方は雲形ですが、他の方は獣や獅子の顔をかたどった「獅噛(しがみ)」と呼ばれるデザインでした。これも四天王像によくありますよね。
「日本芸術文化振興会」のWebサイトに「太平楽」の装束について解説があるので参考までリンク張っておきます。
https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc22/naritachi/souzoku/so4.html
竜が口を開けているような「肩喰」
楽曲は古代中国の武人がテーマとはいえ、その出で立ちは毘沙門天や増長天といった天部つまり武神そのもの。
太平楽の作曲は、文徳天皇のころというから西暦850~858年。その時代から見ても項羽と劉邦の時代は約一千年前の昔話(紀元前206年だそうで)で、遠い古代中国の英雄と強靭な四天王のイメージが重なるのも納得です。
今回の装束は、なんと出演者みずから手作りしたものだそうで「いやあ紙粘土で作ったんですよ」と笑いますがとてもよく出来ていて、舞台映えしていました。
太平楽の舞人の姿を模した人形を取材することができました。
4名でのフォーメーションがわかります→こちらの記事
2.
さて、ふたつめの話題は、こないだここでご紹介した、諏訪の仏法紹隆寺クラウドファンディングのその後です。
貴重な北斗曼荼羅の修復のため始まったクラファンは、最初の目標額を達成しました。
ただ実際にかかる費用はこれ以上のもので、さらにほかにも修復が急がれるものがあるので、さらにセカンドゴールが設けられました。
セカンドゴールの対象は、「釈迦涅槃図」の修復です。
3メートルを超える大きな掛け軸で、享和二年(1802)の年号があり、諏訪地域の村々が施主となり制作されました。
諏訪大社上社境内にあった蓮池院という寺院のものが、明治の神仏分離の際に移管されたものです。
2023年6月30日までとなりますが、よかったらご縁を結んでみてはいかがでしょうか。
https://readyfor.jp/projects/buppouji
仏法紹隆寺は、諏訪大社上社と密接に関係し、諏訪地域の神仏習合のカギをにぎる重要なお寺。
諏訪信仰のナゾについてはこれからも追っていきたいと思います。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「Fantastic Dystopia」。
(雅楽の笙、篳篥が入っています)
(過去記事)
謎めく星の信仰–諏訪・仏法紹隆寺の北斗曼荼羅 その1
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230523-2/
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ登壇 諏訪の信仰を大きくご紹介
「教員紹介」で割引!
早稲田大学オープンカレッジ
「神社の仏像」
7/15(土)から毎土曜全3回
早稲田大学エクステンションセンター中野校にて
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/60453/
↑
新規入会申込時に「教員紹介」を選択して申し込めば、割引になります。
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。芸人の千原せいじさんのYoutubeチャンネルにおじゃましました宮澤やすみです。この連載を見て連絡をくださったそうで、誰も読んでないだろと思っていたけどいちおう役立っているみたいです。
そんな中、今回はふたつの話題をおとどけします。
1.
まず先日は雅楽の演奏会にいってきました。
雅楽を一般の愛好者向けにコンサート会場で演奏している「博雅会」さんの定期演奏会で、毎回うかがっています。
これは前座さんの上演。ここだけ撮影OKでした。「太平楽」のほうは4人の力強い群舞が派手でした
今回の演目は「太平楽」という長大な組曲で、それを全曲やりました。
これのみどころは舞でして、古代中国の項羽と劉邦のエピソード「鴻門の会」を題材にした舞楽です。
四人による舞は、中国の勇壮な武人をモチーフにしていてとても力強いものでした。
矛を持ち、大地を踏みしめて力強く舞うもので、「全曲通すと何キロも痩せる」とプログラムに書いてあるくらい、激しいものです。
注目したのは、その装束です。
写真を撮らせてもらいましたが、これほとんど仏像の四天王ですよね。
手作りだそうですが、かなり精巧に造られている。古くから「太平楽」用の装束は”別装束”として伝承されている
口を開いた怪獣の形をした「肩喰(かたくい)」。この方の場合は竜でしょうか。
ベルトの部分の「帯喰(おびくい)」は、この写真の方は雲形ですが、他の方は獣や獅子の顔をかたどった「獅噛(しがみ)」と呼ばれるデザインでした。これも四天王像によくありますよね。
「日本芸術文化振興会」のWebサイトに「太平楽」の装束について解説があるので参考までリンク張っておきます。
https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc22/naritachi/souzoku/so4.html
竜が口を開けているような「肩喰」
楽曲は古代中国の武人がテーマとはいえ、その出で立ちは毘沙門天や増長天といった天部つまり武神そのもの。
太平楽の作曲は、文徳天皇のころというから西暦850~858年。その時代から見ても項羽と劉邦の時代は約一千年前の昔話(紀元前206年だそうで)で、遠い古代中国の英雄と強靭な四天王のイメージが重なるのも納得です。
今回の装束は、なんと出演者みずから手作りしたものだそうで「いやあ紙粘土で作ったんですよ」と笑いますがとてもよく出来ていて、舞台映えしていました。
太平楽の舞人の姿を模した人形を取材することができました。
4名でのフォーメーションがわかります→こちらの記事
2.
さて、ふたつめの話題は、こないだここでご紹介した、諏訪の仏法紹隆寺クラウドファンディングのその後です。
貴重な北斗曼荼羅の修復のため始まったクラファンは、最初の目標額を達成しました。
ただ実際にかかる費用はこれ以上のもので、さらにほかにも修復が急がれるものがあるので、さらにセカンドゴールが設けられました。
セカンドゴールの対象は、「釈迦涅槃図」の修復です。
3メートルを超える大きな掛け軸で、享和二年(1802)の年号があり、諏訪地域の村々が施主となり制作されました。
諏訪大社上社境内にあった蓮池院という寺院のものが、明治の神仏分離の際に移管されたものです。
2023年6月30日までとなりますが、よかったらご縁を結んでみてはいかがでしょうか。
https://readyfor.jp/projects/buppouji
仏法紹隆寺は、諏訪大社上社と密接に関係し、諏訪地域の神仏習合のカギをにぎる重要なお寺。
諏訪信仰のナゾについてはこれからも追っていきたいと思います。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「Fantastic Dystopia」。
(雅楽の笙、篳篥が入っています)
(過去記事)
謎めく星の信仰–諏訪・仏法紹隆寺の北斗曼荼羅 その1
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230523-2/
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ登壇 諏訪の信仰を大きくご紹介
「教員紹介」で割引!
早稲田大学オープンカレッジ
「神社の仏像」
7/15(土)から毎土曜全3回
早稲田大学エクステンションセンター中野校にて
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/60453/
↑
新規入会申込時に「教員紹介」を選択して申し込めば、割引になります。
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m