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第460回 赤と黒、実用の道具にこもる根源の美 「NEGORO 根来」展より

”荒々しい修二会お水取りの前に粛々と行われる食事――”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。最近ベースを買って家で弾きまくっている宮澤やすみです。弾くとなぜか心が休まる、ベースセラピーとでもいいますか。

そんな中、六本木のサントリー美術館「根来 赤と黒のうるし」展の報道内覧会に行ってきました。
写真は特別な許可を得て撮影したものです。


巨大な根来がお迎えしてくれる美術館エントランス

タイトルのとおり、赤と黒の漆器の展示ですが、法隆寺や東大寺で長年使い込まれた物品の数々の存在感たるや、仏像に引けをとらないものを感じます。

根来塗のはじまりやその定義はわりとあいまいでして、諸説あるのが現状。
仏像ファンなら聞いたことがあるかもしれない、真義真言宗のお寺・根来寺(ねごろじ)との関連も、不確かなのだそう。


仏像の展示も。厨子とともに。《筒形厨子入愛染明王像》鎌倉時代 13世紀 和歌山・金剛峯寺高野山霊宝館

とはいえ、法隆寺や東大寺などの大寺院で大事な儀式の器として重用されていて、それが今回いくつも展示されていて、お寺や仏像ファンも見過ごすにはもったいない世界です。

たとえば、二月堂の修二会で、儀式を執り行う「練行衆」の食事に用いられた、器を置く「盤」がずらり。


《二月堂練行衆盤》鎌倉時代 永仁6年(1298)奈良・東大寺ほか各地の美術館所蔵の番が一堂に

荒々しいお水取り行事の前に粛々と行われる食事(儀式の一環)で、丁寧に使われた盤もすり減って黒い下地が見えています。実際に使われて自然に生まれたその模様が、見るものを想像の世界に引き込みます。

ほかに、仏像ファンが見逃せないのが東大寺・戒壇院で使われた桶。
厨房用具のひとつですが、底面の墨書に「浄慶」とあるそうです。


写真手前にあるのが《汁桶(東大寺戒壇院所用厨房用具のうち)》室町時代 応永2年(1395)奈良・東大寺

浄慶は、熊野の仏師として活躍したそうですが、こうした什器も作っていたんでしょうか。それとも別人なのか。
ともかく、お寺では仏像に目が行きがちですが、ここに老若の僧がいて毎日のくらしがあったことを思い知らされます。
この桶は汁物を入れていたものなので、つまり我々が給食でカレーとかを給食係が取り分けていたああいう大きな寸胴ですね。


粥や汁をすくって取り分けた杓子も、用の美が宿る

根来の由来は不明確とはいえ、全部で26もの工程(そのほとんどが下地作り)を経た堅牢な器が、長年の使用で自然に表面の赤が剝げ落ち、黒い下地が見えてくるその様を見ると、日本人の原初的な美意識を感じずにはいられません。


神に酒を奉納する器として、対で使われていた《瓶子》。サントリー美術館とMIHO MUSEUM所蔵の両者が並んで見られる

漆器は縄文時代からあったそうですが、朱や弁柄など赤い顔料は太陽や生命の象徴として古代から用いられ、その対極にある黒は闇を表し、この赤と黒のせめぎ合いが現代美術にも通じる美しさとして、愛好家を魅了してきました。


西大寺の茶事で用いられた天目茶碗セット。《輪花天目盆》室町時代 享徳4年(1455)《輪花天目台》奈良・西大寺

実用品として使い込まれてきた根来塗の数々。神社や大寺院で用いられたこともあるせいか、仏像と同じように人々の想いや念が長年のうちに浸み込んでいるような気がしました。

それでは聴いてください。
ねごと で「ETERNALBEAT」。



NEGORO 根来 — 赤と黒のうるし
2025年11月22日(土)~2026年1月12日(月・祝)
東京 サントリー美術館
詳細
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2025_5/



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--おしらせ---
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