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第461回 これがあの場所? 写真も音楽も仏像にも求められる「アーカイブ」の力
”この活動のキモは、ただ記録して保存しておしまいではなく――”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。実家にあった古いレコードプレーヤーを手入れしてまた使い始めた宮澤やすみです。温かみのあるレコードの音に癒されます。
そんな中、前々回でお伝えした「渋谷アーカイブ写真展(Shibuya Photo Archive Exhibition)」が閉幕しました。

エントランス。SPAEはShibuya Photo Archive Exhibitionの略
僕もお手伝いとして連日会場にいましたが、まさに老若男女あらゆる層、欧米アジアあらゆる国のお客様がいらして大盛況でした。
「なつかしいわねえ」
と興奮気味に話すご年配の方や、
「昔の渋谷がこんなだったなんて」
と驚く学生さん。なかには高校生もふらりと見に来て、みんなで渋谷の話が尽きませんでした。

渋谷アーカイブ写真展2025 展示風景
展示は、渋谷の古い風景を写した写真を集めて、現在位置を特定し、現代の風景と比べるのが趣旨で、その特定作業も、主要メンバーに交じって僕も少し手伝いました。

大正10年ごろの明治通り。路面電車と馬が引く荷車が見える。写真提供:白根記念渋谷区郷土博物館・文学館
当然ながら、写真の光景と現在では街がまるっきり様変わりしていますのでね、その特定は簡単にはいきません。
写真のはじっこに写っている店やビルの名前を見つけては古地図を探し、道の曲がりぐあいとも照合して「ここだ!」と分かったときはうれしいもの。
たとえばこの写真。1960年代のごくふつうの民家と犬が写る路地裏に、渋谷のどこなのか不明だったそうです。

1966年、地元に住む大西忠保氏が撮影。ここが現在の渋谷の中心とは想像できるだろうか
しかし、写真の右端に見つけた「内田土建」の文字がヒントとなり、ここがあの渋谷スペイン坂だったとわかったそう。こういうのはなかなか痛快な歴史発見の瞬間です。
しかも、今回の展示で、「これ、ウチだよ!」と、その内田さんの子孫の方が来てくださったりして、まさにご本人登場の劇的な場に立ち会えたのでした。

写っている犬が内田氏の愛犬タローであることも判明
前々回も書きましたが、この企画は渋谷に縁のある趣味の仲間がだんだん集まってできたCAC(Commons Archive Collective)というグループによるもの。その趣旨は、公式サイトによると、
――埋もれたまま忘れられつつある記録を整理・体系化し、それを視覚的にデザインすることで記録の価値を伝え、共有資産として社会にひらくことを目的とした団体です――(CAC公式サイトより)
要するに、散逸しがちな貴重なものを集めて整理し、現代さらには未来に伝える活動をする人たちです。
これって、仏像の保存、継承にも当てはまるものですよね。
僕は、この連載で仏像の保全と継承の現場を見てきました。
また、
音楽の分野では、昭和初期のジャズや小唄も、ほっとくと消えて無くなるものを掘り出して整理する人がいて、それを人前で披露する仕事をしてきました。もうひとつの仕事である無声映画も、僕の仲間たちが貴重なフィルムの保全にいつも奔走しています。
こうした活動は「アーカイブ(Archive)」といいまして、今回の写真展示もアーカイブの活動になります。
この活動のキモは、ただ記録して保存しておしまいではなく、人様に披露することで完結するという点かと思います。

来場者が思い思いに「渋谷の好きな通り」を投稿
今回の写真展示も若い人に刺さるクールでおしゃれなものでした。
ぼくの小唄も現代の人が楽しめるように工夫しています。博物館での仏像展示もアーカイブの観点から非常に大事です。
そんなわけで、僕は日ごろからアーカイブの世界で仕事をしていたのでした。
昨今はオタクの世界が進化して、あらゆるものをコレクションする人が増えているように感じます。
時代の変化や再開発が急速に進む中で、使い込んだ古いものやいとおしく感じるものを無くしたくない、そんな感情がわれわれを取り巻き、共感を生んでいるのではないでしょうか。
そんな時代に集結したCACの5人メンバー。僕は彼らが適材適所の活躍をする様を間近で見てきました。
学術的なノウハウをもった専門家や研究家、それを一般向けに魅力的に見せるためのクールなデザイン、アピールのためのアイデアと行動力などなど。
そしてチーム全員がひとつの美学に貫かれている、その一体感を美しく思いましたね。

渋谷駅前の大ポスター。紙からデジタルサイネージまで渋谷のあらゆるメディアを使い周知宣伝を敢行
みなさん自分より年下ではありますが、頼れるお兄さんお姉さんという勝手な印象。
自分がこのメンバーと同じ年だった頃を思い返すと、あの時は離婚して仕事もなく…いや暗くなるからよしましょう。
ふだん、すごく狭い世界にいますのでね、大人のサークル活動は社会勉強。これまで絶対出会えないような人と会えて、いろんな話もできたのは、自分にとって財産です。
そんなわけで、今回は神仏ネタとはちがう身近なエッセイをお届けしました。
それでは聴いてください。
大貫妙子で「都会」。
SPAE 渋谷アーカイブ写真展2025 オフィシャルサイト
https://spae2025.studio.site/
CAC: Commons Archive Collective
https://comms-arch-coll.studio.site/
■あわせて読む(関連記事)
歴史がつながる古写真展「渋谷アーカイブ写真展」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20251118-2/
消滅間近の昭和建築、渋谷駅の大改装
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20231010-2/
サイレント映画に登場していた仏像に注目
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20191008-2/
風神雷神が吉原に繰り出した? 小唄で描かれる神仏世界
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20171021-2/
甘美なるフランス」の時代、祖父はパリにいた③
一次資料でみる100年前の日本人欧州探訪記
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211005-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:
https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。実家にあった古いレコードプレーヤーを手入れしてまた使い始めた宮澤やすみです。温かみのあるレコードの音に癒されます。
そんな中、前々回でお伝えした「渋谷アーカイブ写真展(Shibuya Photo Archive Exhibition)」が閉幕しました。

エントランス。SPAEはShibuya Photo Archive Exhibitionの略
僕もお手伝いとして連日会場にいましたが、まさに老若男女あらゆる層、欧米アジアあらゆる国のお客様がいらして大盛況でした。
「なつかしいわねえ」
と興奮気味に話すご年配の方や、
「昔の渋谷がこんなだったなんて」
と驚く学生さん。なかには高校生もふらりと見に来て、みんなで渋谷の話が尽きませんでした。

渋谷アーカイブ写真展2025 展示風景
展示は、渋谷の古い風景を写した写真を集めて、現在位置を特定し、現代の風景と比べるのが趣旨で、その特定作業も、主要メンバーに交じって僕も少し手伝いました。

大正10年ごろの明治通り。路面電車と馬が引く荷車が見える。写真提供:白根記念渋谷区郷土博物館・文学館
当然ながら、写真の光景と現在では街がまるっきり様変わりしていますのでね、その特定は簡単にはいきません。
写真のはじっこに写っている店やビルの名前を見つけては古地図を探し、道の曲がりぐあいとも照合して「ここだ!」と分かったときはうれしいもの。
たとえばこの写真。1960年代のごくふつうの民家と犬が写る路地裏に、渋谷のどこなのか不明だったそうです。

1966年、地元に住む大西忠保氏が撮影。ここが現在の渋谷の中心とは想像できるだろうか
しかし、写真の右端に見つけた「内田土建」の文字がヒントとなり、ここがあの渋谷スペイン坂だったとわかったそう。こういうのはなかなか痛快な歴史発見の瞬間です。
しかも、今回の展示で、「これ、ウチだよ!」と、その内田さんの子孫の方が来てくださったりして、まさにご本人登場の劇的な場に立ち会えたのでした。

写っている犬が内田氏の愛犬タローであることも判明
前々回も書きましたが、この企画は渋谷に縁のある趣味の仲間がだんだん集まってできたCAC(Commons Archive Collective)というグループによるもの。その趣旨は、公式サイトによると、
――埋もれたまま忘れられつつある記録を整理・体系化し、それを視覚的にデザインすることで記録の価値を伝え、共有資産として社会にひらくことを目的とした団体です――(CAC公式サイトより)
要するに、散逸しがちな貴重なものを集めて整理し、現代さらには未来に伝える活動をする人たちです。
これって、仏像の保存、継承にも当てはまるものですよね。
僕は、この連載で仏像の保全と継承の現場を見てきました。
また、
音楽の分野では、昭和初期のジャズや小唄も、ほっとくと消えて無くなるものを掘り出して整理する人がいて、それを人前で披露する仕事をしてきました。もうひとつの仕事である無声映画も、僕の仲間たちが貴重なフィルムの保全にいつも奔走しています。
こうした活動は「アーカイブ(Archive)」といいまして、今回の写真展示もアーカイブの活動になります。
この活動のキモは、ただ記録して保存しておしまいではなく、人様に披露することで完結するという点かと思います。

来場者が思い思いに「渋谷の好きな通り」を投稿
今回の写真展示も若い人に刺さるクールでおしゃれなものでした。
ぼくの小唄も現代の人が楽しめるように工夫しています。博物館での仏像展示もアーカイブの観点から非常に大事です。
そんなわけで、僕は日ごろからアーカイブの世界で仕事をしていたのでした。
昨今はオタクの世界が進化して、あらゆるものをコレクションする人が増えているように感じます。
時代の変化や再開発が急速に進む中で、使い込んだ古いものやいとおしく感じるものを無くしたくない、そんな感情がわれわれを取り巻き、共感を生んでいるのではないでしょうか。
そんな時代に集結したCACの5人メンバー。僕は彼らが適材適所の活躍をする様を間近で見てきました。
学術的なノウハウをもった専門家や研究家、それを一般向けに魅力的に見せるためのクールなデザイン、アピールのためのアイデアと行動力などなど。
そしてチーム全員がひとつの美学に貫かれている、その一体感を美しく思いましたね。

渋谷駅前の大ポスター。紙からデジタルサイネージまで渋谷のあらゆるメディアを使い周知宣伝を敢行
みなさん自分より年下ではありますが、頼れるお兄さんお姉さんという勝手な印象。
自分がこのメンバーと同じ年だった頃を思い返すと、あの時は離婚して仕事もなく…いや暗くなるからよしましょう。
ふだん、すごく狭い世界にいますのでね、大人のサークル活動は社会勉強。これまで絶対出会えないような人と会えて、いろんな話もできたのは、自分にとって財産です。
そんなわけで、今回は神仏ネタとはちがう身近なエッセイをお届けしました。
それでは聴いてください。
大貫妙子で「都会」。
SPAE 渋谷アーカイブ写真展2025 オフィシャルサイト
https://spae2025.studio.site/
CAC: Commons Archive Collective
https://comms-arch-coll.studio.site/
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『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:
https://yasumimiyazawa.com


