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第467回 今につながる新宿風景 ―「モダンアート新宿」展
”100年前のアート作品を見ると、前時代とはいえ現在と地続きであり――”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。三味線のレコーディング仕事を終えてヘトヘトの宮澤やすみです。無声映画長編90分の音楽を三味線だけでひとり演奏しています。詳細は後日。
そんな中、年明けは美術展が数多く開幕。
先日は東京新宿SOMPO美術館で「」展を取材してきました。
写真はプレス内覧会で許可を得て撮影したものです(一般撮影可のものもあり会場でご確認ください)。

会場風景。およそ100年前の新宿の風景が並ぶ
まず、モダン Modern という言葉は意外とややこしいもので、直訳すると「現代」とも「近代」とも捉えられます。
ことアートの世界では「近代」の意味合いで用いられるので、モダンアートとはおよそ100年前の近代を指す用語になります。
※まさに今「現代」を指す用語は「コンテンポラリー」となりますが、100年後はどうなるんでしょう。
さて、そこをふまえて今回の展示を見ますと、まず目に入るのは明治-大正期に新宿界隈で活躍した洋画家たち。
このころ新宿の中村屋(インドカレーで有名)が芸術家が集まる拠点となっていて、さまざまな才能が交錯しています。
なかでもとくに中村彝(なかむら つね)の作品は目を引きました。

中村彝《カルピスの包み紙のある静物》1923年 油彩・カンヴァス 茨城県近代美術館
時は日露戦争勝利後の日本、多くの日本人が積極的に欧米へ留学します。その流れでアートの世界でも洋画の手法が日本でも浸透して、首都東京新宿で花開くこととなります。
時代は下って、第一次世界大戦が終結した後の平和な「戦間期」も、多くの日本人がヨーロッパへ留学します。
代表的なのは佐伯祐三でしょうか。ゴッホなど後期印象派の影響を受けたあと、モーリス・ド・ヴラマンクに教えを請い、写実から離れた当世風の絵画を完成させたそうです。
パリの風景がよく知られますが、ここでは新宿区下落合の風景など地元のようすがあのタッチで描かれます。

佐伯祐三《下落合風景》1926年頃 大阪中之島美術館、《雪景色》1927年 東京国立近代美術館
この時代のアートに疎い私ですが、今回の展示でも佐伯作品の独特のタッチは際立っていて、離れたところから見ても「あ、きっとこれ佐伯さんの作品だよね!」とわかるような異彩を感じられました。

佐伯祐三作品が並ぶ展示室
展示室を進むと、新宿界隈の当時の風景が見られます。
白黒写真でみるよりずっとリアルに伝わるのは、絵画作品のアドバンテージでしょうか。
小さい絵画作品でもその場にリアルにいるような想像を掻き立てられます。
およそ80-100年前の東京・新宿の風景は、古いような今と変わらないような、猥雑な都会の風景を感じました。
個人的には、日ごろ活弁(サイレント映画の弁士楽士付き上演)で出演している、新宿「武蔵野館」の1930年当時の風景があったのが灌漑深かったです。
現在も営業している武蔵野館は都内で最古の映画館。
現在は改装されていますが、当時のにぎやかな様子が偲ばれるとても貴重な絵です。
また、私の三味線の稽古場がある神楽坂の風景もありました(写真うまく撮れず)。

今も残る老舗映画館のかつての様子が偲ばれる。織田一磨『画集新宿』より《第三図 武蔵野館》1930年 新宿歴史博物館
さらに、以前この連載で紹介しましたが、100年前のこの時代に祖父がヨーロッパ留学をしており、「新宿中村屋のお嬢さん」にドイツで会ったとの日記が残っています。阿佐ヶ谷に居を構えていたウチの一族は新宿の街に出かけていたことでしょう。

木村荘八《新宿駅》1935年 個人像
こうして100年前のアート作品を見ると、前時代とはいえ現在と地続きであり、我々の世界と密接に関係しているということが実感できて、身近に感じられるのでした。
それでは聴いてください。
デヴィッド・ボウイ で「Modern Love」
■あわせて読む(関連記事)
「甘美なるフランス」の時代、祖父はパリにいた③
(新宿中村屋の娘さんとの遭遇など)
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211005-2/
派閥を超えた先の”自由な派閥”「プチパレ美術館」展
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円空仏か神像か?-ルートヴィヒ美術館展
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220705-2/
「印象派-光の系譜」人気沸騰レッサー・ユリィ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211102-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)
【カミとホトケの秘めた縁】
―神仏習合/分離でひもとく、いにしえの信仰のかたち―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/66458/
※期間限定 入会金無料キャンペーン中
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。三味線のレコーディング仕事を終えてヘトヘトの宮澤やすみです。無声映画長編90分の音楽を三味線だけでひとり演奏しています。詳細は後日。
そんな中、年明けは美術展が数多く開幕。
先日は東京新宿SOMPO美術館で「」展を取材してきました。
写真はプレス内覧会で許可を得て撮影したものです(一般撮影可のものもあり会場でご確認ください)。

会場風景。およそ100年前の新宿の風景が並ぶ
まず、モダン Modern という言葉は意外とややこしいもので、直訳すると「現代」とも「近代」とも捉えられます。
ことアートの世界では「近代」の意味合いで用いられるので、モダンアートとはおよそ100年前の近代を指す用語になります。
※まさに今「現代」を指す用語は「コンテンポラリー」となりますが、100年後はどうなるんでしょう。
さて、そこをふまえて今回の展示を見ますと、まず目に入るのは明治-大正期に新宿界隈で活躍した洋画家たち。
このころ新宿の中村屋(インドカレーで有名)が芸術家が集まる拠点となっていて、さまざまな才能が交錯しています。
なかでもとくに中村彝(なかむら つね)の作品は目を引きました。

中村彝《カルピスの包み紙のある静物》1923年 油彩・カンヴァス 茨城県近代美術館
時は日露戦争勝利後の日本、多くの日本人が積極的に欧米へ留学します。その流れでアートの世界でも洋画の手法が日本でも浸透して、首都東京新宿で花開くこととなります。
時代は下って、第一次世界大戦が終結した後の平和な「戦間期」も、多くの日本人がヨーロッパへ留学します。
代表的なのは佐伯祐三でしょうか。ゴッホなど後期印象派の影響を受けたあと、モーリス・ド・ヴラマンクに教えを請い、写実から離れた当世風の絵画を完成させたそうです。
パリの風景がよく知られますが、ここでは新宿区下落合の風景など地元のようすがあのタッチで描かれます。

佐伯祐三《下落合風景》1926年頃 大阪中之島美術館、《雪景色》1927年 東京国立近代美術館
この時代のアートに疎い私ですが、今回の展示でも佐伯作品の独特のタッチは際立っていて、離れたところから見ても「あ、きっとこれ佐伯さんの作品だよね!」とわかるような異彩を感じられました。

佐伯祐三作品が並ぶ展示室
展示室を進むと、新宿界隈の当時の風景が見られます。
白黒写真でみるよりずっとリアルに伝わるのは、絵画作品のアドバンテージでしょうか。
小さい絵画作品でもその場にリアルにいるような想像を掻き立てられます。
およそ80-100年前の東京・新宿の風景は、古いような今と変わらないような、猥雑な都会の風景を感じました。
個人的には、日ごろ活弁(サイレント映画の弁士楽士付き上演)で出演している、新宿「武蔵野館」の1930年当時の風景があったのが灌漑深かったです。
現在も営業している武蔵野館は都内で最古の映画館。
現在は改装されていますが、当時のにぎやかな様子が偲ばれるとても貴重な絵です。
また、私の三味線の稽古場がある神楽坂の風景もありました(写真うまく撮れず)。

今も残る老舗映画館のかつての様子が偲ばれる。織田一磨『画集新宿』より《第三図 武蔵野館》1930年 新宿歴史博物館
さらに、以前この連載で紹介しましたが、100年前のこの時代に祖父がヨーロッパ留学をしており、「新宿中村屋のお嬢さん」にドイツで会ったとの日記が残っています。阿佐ヶ谷に居を構えていたウチの一族は新宿の街に出かけていたことでしょう。

木村荘八《新宿駅》1935年 個人像
こうして100年前のアート作品を見ると、前時代とはいえ現在と地続きであり、我々の世界と密接に関係しているということが実感できて、身近に感じられるのでした。
それでは聴いてください。
デヴィッド・ボウイ で「Modern Love」
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1.
早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)
【カミとホトケの秘めた縁】
―神仏習合/分離でひもとく、いにしえの信仰のかたち―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/66458/
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宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
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