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第377回 くすりのまち富山の薬師信仰
”富山の薬は薬師如来と関係があるのでしょうか?--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。富山市オーバードホールでの「活弁LIVE」。北陸の皆さんありがとうございました。エレキ三味線でチャップリンなどの洋画を生伴奏しました。活動弁士は山内菜々子さん。
なぜか富山には縁があり何度か訪れています。この連載では、富山のシンボル立山連峰のうち、雄山の阿弥陀如来(矢疵で血を流す)、剣岳の不動明王、さらに麓の女人救済「おんば様」などの信仰を紹介しました(記事下部にリンクあり)。
富山駅前にある「富山のくすりやさん」銅像
ただ、富山といえば一般には薬都(やくと)、つまり製薬業が盛んということが知られますよね。
行商で各地に富山の薬を売りに行ったとか。
仏像ファン目線では、くすりといえばやっぱり薬師如来となるわけなんですけど、そんな中で見かけた看板がこちらです。
銅像のすぐそばにある薬局。店名「瑠璃光」に注目
富山駅前にある薬屋さんなんですけど、「瑠璃光」とは風流な名前ですね。
瑠璃光とは、薬師如来が放つ光で、薬師如来が住むという東の果ての浄土、薬師瑠璃光浄土を象徴しています。
阿弥陀さんだと西の「極楽浄土」ですが、薬師さんは東の「瑠璃光浄土」なんですね。
別名「浄瑠璃浄土」ともいって、歌舞伎や文楽の「浄瑠璃」はここからきています。
そんなわけで、やはり富山の薬は薬師如来と関係があるのでしょうか?
調べてみると、立山連峰に「薬師岳」があり、そこが富山薬師信仰の中心になっているようです。
立山・薬師岳
現在の富山市の南東部・かつて有峰村といわれた森林集落の伝承があります。
時は明徳元年(1390)、この地に暮らすミザの松という職人が薬師如来の声を聞きました。
光り輝く薬師如来を追って、高い山の上に登頂。そこに石のお堂がありました。
ミザの松はこの体験をもとに村にも薬師堂を建立。これが「里の薬師」。山を薬師岳として崇敬された……という話。
Yasu (talk) - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
これが薬師岳開山の伝承ですが、つまり薬師信仰の前から山は神の山として信仰されていたんですね。
山頂の薬師堂(岳の薬師)は本来は独自の山の神を祀るものだったらしいです。
後の調査で鉄剣(鉄板を剣の形に切り抜いたもの)などなど奉納された遺物が見つかり、富山県「薬師岳山頂遺跡」として指定されています。
また、「里の薬師」には鳥居があったとのことで(ありみネット:有峰森林文化村HPより)、神仏習合の色濃い立山ならではの信仰があったようです。里の薬師があった有峰集落は、ダム建設によって湖の底に沈んでいます。
そして、富山で製薬が反映するのは江戸時代、元禄3年(1690年)のこと。
富山藩主・前田正甫(まさとし)公が、体調を崩した他国の大名に薬を与えたのがきっかけだそう。
ミザの松から300年後のことですが、その間に富山の薬師信仰から病気平癒の創意工夫がなされたんでしょうか。
ちなみにこちらは剣岳の不動明王信仰と関係が深い大岩山日石寺の三重塔
僕は今回は音楽の仕事で富山を訪れたのですが、以前紹介した阿弥陀如来と芦峅寺(あしくらじ)、雄山神社の話などと合わせて、興味深い富山・立山の信仰を知るきっかけになりました。
出演のようす。活動弁士・山内菜々子(写真右)が語り、わたくし宮澤やすみが三味線生演奏(写真左)。活動写真は音が無いサイレント映画ですから、弁士と楽士がその場で語りと音楽を付けます。これが「活弁」。いわば映画ライブなのです
市内には今も薬師堂がいくつかあるようで、また機会があったらお参りしたいと思います。
(過去記事)
流血する阿弥陀如来のナゾ。立山信仰のヒミツ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20181023-2/
立山の女人救済「おんば様」と謎の「布橋灌頂会」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20181016-2/
暗闇の不動明王!立山の「怖カワイイ」摩崖仏
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20181106-2/
富山・高岡の誇り高岡大仏へ①
(これも活動弁士・山内菜々子さんと一緒でした)
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220927-2/
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「川のほとりで By The River」。
(古事記のエピソードから着想を得て書かれた一曲です)
(参考)
ありみネット│有峰森林文化村
http://www.arimine.net/naze/yakusidakesinnkou.htm
薬師岳山頂遺跡│富山市埋蔵文化財センター
https://www.city.toyama.toyama.jp/etc/maibun/center/topics/yakusidake/yakusi.htm
富山のくすり│富山県薬業連合会
https://www.toyama-kusuri.jp/ja/history/index.html
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。富山市オーバードホールでの「活弁LIVE」。北陸の皆さんありがとうございました。エレキ三味線でチャップリンなどの洋画を生伴奏しました。活動弁士は山内菜々子さん。
なぜか富山には縁があり何度か訪れています。この連載では、富山のシンボル立山連峰のうち、雄山の阿弥陀如来(矢疵で血を流す)、剣岳の不動明王、さらに麓の女人救済「おんば様」などの信仰を紹介しました(記事下部にリンクあり)。
富山駅前にある「富山のくすりやさん」銅像
ただ、富山といえば一般には薬都(やくと)、つまり製薬業が盛んということが知られますよね。
行商で各地に富山の薬を売りに行ったとか。
仏像ファン目線では、くすりといえばやっぱり薬師如来となるわけなんですけど、そんな中で見かけた看板がこちらです。
銅像のすぐそばにある薬局。店名「瑠璃光」に注目
富山駅前にある薬屋さんなんですけど、「瑠璃光」とは風流な名前ですね。
瑠璃光とは、薬師如来が放つ光で、薬師如来が住むという東の果ての浄土、薬師瑠璃光浄土を象徴しています。
阿弥陀さんだと西の「極楽浄土」ですが、薬師さんは東の「瑠璃光浄土」なんですね。
別名「浄瑠璃浄土」ともいって、歌舞伎や文楽の「浄瑠璃」はここからきています。
そんなわけで、やはり富山の薬は薬師如来と関係があるのでしょうか?
調べてみると、立山連峰に「薬師岳」があり、そこが富山薬師信仰の中心になっているようです。
立山・薬師岳
現在の富山市の南東部・かつて有峰村といわれた森林集落の伝承があります。
時は明徳元年(1390)、この地に暮らすミザの松という職人が薬師如来の声を聞きました。
光り輝く薬師如来を追って、高い山の上に登頂。そこに石のお堂がありました。
ミザの松はこの体験をもとに村にも薬師堂を建立。これが「里の薬師」。山を薬師岳として崇敬された……という話。
Yasu (talk) - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
これが薬師岳開山の伝承ですが、つまり薬師信仰の前から山は神の山として信仰されていたんですね。
山頂の薬師堂(岳の薬師)は本来は独自の山の神を祀るものだったらしいです。
後の調査で鉄剣(鉄板を剣の形に切り抜いたもの)などなど奉納された遺物が見つかり、富山県「薬師岳山頂遺跡」として指定されています。
また、「里の薬師」には鳥居があったとのことで(ありみネット:有峰森林文化村HPより)、神仏習合の色濃い立山ならではの信仰があったようです。里の薬師があった有峰集落は、ダム建設によって湖の底に沈んでいます。
そして、富山で製薬が反映するのは江戸時代、元禄3年(1690年)のこと。
富山藩主・前田正甫(まさとし)公が、体調を崩した他国の大名に薬を与えたのがきっかけだそう。
ミザの松から300年後のことですが、その間に富山の薬師信仰から病気平癒の創意工夫がなされたんでしょうか。
ちなみにこちらは剣岳の不動明王信仰と関係が深い大岩山日石寺の三重塔
僕は今回は音楽の仕事で富山を訪れたのですが、以前紹介した阿弥陀如来と芦峅寺(あしくらじ)、雄山神社の話などと合わせて、興味深い富山・立山の信仰を知るきっかけになりました。
出演のようす。活動弁士・山内菜々子(写真右)が語り、わたくし宮澤やすみが三味線生演奏(写真左)。活動写真は音が無いサイレント映画ですから、弁士と楽士がその場で語りと音楽を付けます。これが「活弁」。いわば映画ライブなのです
市内には今も薬師堂がいくつかあるようで、また機会があったらお参りしたいと思います。
(過去記事)
流血する阿弥陀如来のナゾ。立山信仰のヒミツ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20181023-2/
立山の女人救済「おんば様」と謎の「布橋灌頂会」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20181016-2/
暗闇の不動明王!立山の「怖カワイイ」摩崖仏
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20181106-2/
富山・高岡の誇り高岡大仏へ①
(これも活動弁士・山内菜々子さんと一緒でした)
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220927-2/
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「川のほとりで By The River」。
(古事記のエピソードから着想を得て書かれた一曲です)
(参考)
ありみネット│有峰森林文化村
http://www.arimine.net/naze/yakusidakesinnkou.htm
薬師岳山頂遺跡│富山市埋蔵文化財センター
https://www.city.toyama.toyama.jp/etc/maibun/center/topics/yakusidake/yakusi.htm
富山のくすり│富山県薬業連合会
https://www.toyama-kusuri.jp/ja/history/index.html
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m