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第442回 春日大社の祭神と不空羂索観音と鹿 ―「神仏と人物」展―

”このような神と仏のペアリング。その組み合わせの理由は--”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。7月5日の三味線ライブを無事に完遂してほっとしている宮澤やすみです。三味線の弾き唄い(弾き語り)とトークでひとり出演。みなさん楽しんでいただけたようでよかったです。

そんな中、先日は静嘉堂@丸の内での「神仏と人物」展の取材に行ってきました。
写真は報道内覧会でのものですが、一般来場者も全品撮影OKだそうです(ただしスマホ、タブレット限定)。


丸の内の静嘉堂文庫美術館。ホワイエから展示室へ

日本の古い絵画に描かれた人物と神仏、おなじ人の姿ではあるものの、人物と神仏の描き方にはルールがある、そんなテーマで静嘉堂所蔵の名品を見ていくテーマです。
夏休みの子供たち向けに楽しい解説と展示。でも最後には長年人目に触れていなかったお宝、狩野探幽の手による歴代禅僧画があったりして美術通の常連さんもうなるラインナップです。


神仏画の展示室

そんな中でわたしが注目したのは、春日曼荼羅。
奈良の春日大社の信仰に基づいた神仏画です。

春日大社は、神仏習合の色濃い神社であり、じつは私も今ちょうど早稲田大学エクステンションセンター(社会人講座)でこのへんを講義してまして、絶好の展示なのでした。

神仏習合とはつまり、祀られている祭神に、それぞれ「本地仏」があてがわれていること。
本地仏とは、神の本体が仏であるという考え方にもとづいて設定された、神の本体となる仏のことです。
ざっくりいうと、
神=変身後の姿(垂迹 すいじゃく)
仏=変身前の姿(本地 ほんじ)

ということ。
こうした考え方にもとづいて描かれた《春日本迹曼荼羅》が展示されていました。


春日大社に祀られる祭神と本地仏を描き並べている。重要文化財《春日本迹曼荼羅》鎌倉時代 14世紀

春日大社にはたくさんの神が祀られていて、それぞれの神とその本地仏の姿が丁寧に描かれます。
しかも、それぞれの枠のメインにまず仏の絵があり、その脇に神が描かれるという、”ブツファースト”のレイアウトであるのが興味深いです。


画面左は十一面観音と第四神ヒメノカミ、中央は薬師如来と第二神フツヌシ、右は地蔵菩薩と第三神アメノコヤネが描かれている

春日大社の場合、本殿の主祭神(四柱ある)と若宮社の本地仏が「春日曼荼羅」として描かれることが多いです。







神名本地仏
本殿
第一神
武甕槌命(タケミカヅチ)不空羂索(ふくうけんさく)観音
もしくは釈迦如来
本殿
第二神
経津主命(フツヌシ)薬師如来
本殿
第三神
天児屋根命(アメノコヤネ)地蔵菩薩
本殿
第四神
比売神(ヒメノカミ)十一面観音
若宮天押雲根命(アメノオシクモ)文殊菩薩


このような神と仏のペアリング。
その組み合わせの理由はよくわかりません。偉い人が夢で見たとか、ちょっと一般人にはわかりえない話なんでしょうか。

なんとなく予想できるのは、第一神のタケミカヅチについて。
この神は、もともと鹿島神宮の主祭神であり、鹿に乗って奈良までお越しになり、春日山に鎮座したとされます(江戸など各所に鹿島神の奈良勧請の旅の伝承が残っています)。


春日大社の鹿信仰をフィーチャーした《春日鹿曼荼羅》室町時代 15世紀。鹿が背負う金色の鏡に不空羂索観音が描かれる。その観音の四隅にほかの本地仏もうっすらと描かれているが見えづらいので会場でご覧あれ

そんな鹿とゆかりの深い神、タケミカヅチの本地仏が不空羂索観音菩薩とされますが、これは観音菩薩の変化身の一種で、その姿は鹿の皮を肩にかけていて、別名「鹿皮観音」ともいうんですよね。
くわしくは仏像ワールドの解説に書いてあります。


(参考)イスム《不空羂索観音菩薩》

そんなわけで、タケミカヅチと本地仏の「鹿つながり」が見て取れるのでした。

ほかの祭神と本地仏の由来は、わかりません。
第二神フツヌシは、千葉・香取神宮の神なのですが、香取では十一面観音とされますし(下記関連記事)。
もし何かわかれば、またレポートしたいと思います。


それでは聴いてください。
ブラック・サバス で「God Is Dead?」
(オジー・オズボーンとサバス最後のライブ見届けました)



絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ
静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
2025年7月5日(土)~9月23日(火・祝)
[前期:7/5~8/11、後期:8/13~9/23]
※前後期でほぼ全ての作品入れ替え
詳細
https://www.seikado.or.jp/



■あわせて読む(関連記事)
仏像のだいじな持物「羂索」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20200428-2/
春日大社と仏像
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20170218-2/
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千葉・佐原の十一面観音② 廃仏毀釈の嵐を逃れて(春日第二神・フツヌシは香取神宮祭神)
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211124-2/




--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)
消された仏像―古社・古寺の神仏分離
―神と仏、1300年の「事情」―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/65021/

2.
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!



宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html

宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com