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第451回 ”あの時代”の正体とは? 作品から自分を見直す「時代のプリズム」展
”大震災はのちに、人とのつながりやコミュニティと個人の関係を考えさせ、それを作品化したものも――”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。秋は毎年忙しいはずなのが、今年に限って妙にヒマになっている宮澤やすみです。みなさまお仕事ください。
そんな中、国立新美術館で「時代のプリズム」展が開幕。取材にいってきました。

「時代のプリズム」展ポスター
この展覧会は、1989年から2010年までの日本の現代美術を振り返るものです。
冷戦が終わって、平成が始まる1989年、急速に進むグローバル化の中で、日本を振り返ったり、価値観が多様化する中で自分のアイデンティティを問い直したり、
そういったテーマで展示が進みます。

展示風景。椿昇《エステティック・レボリューション》1990年 ほか
1989年からの20年というと、自分がちょうど学生から社会人になっていろいろあった時代と重なります。
生まれは昭和ではありますが、大人として世間の荒波で動き出したのはまさしく平成のこの頃にあたるので、今回の展示は他人事と思えない、なにか切実なものを感じたのでした。

展示作品の年表は、そのまま筆者の人生に重なっていた
おおまかに1990年代。その最初にバブルがはじけ、しかし若い世代は暗くなるというより、わりとアイロニカルに世間をとらえ、自分たちは自分たちなりに楽しむからといった風潮があったように思います。

展示風景。森村泰昌の油絵風プリント作品《肖像(双子)》1989年 がお出迎え
そのアイロニカルな気持ちが行き過ぎたのでしょうか、後に炎上することになる小山田圭吾氏の言動が雑誌に載ったのもちょうどこのころ。90年代は冗談半分の露悪趣味がまかり通っていたように思います。

展示風景。展示室は禁止の表示があるものを除いて撮影可
渋谷系のこじゃれた音楽がトーキョーに鳴り響く中、阪神淡路大震災とオウム真理教によるテロ事件がこの時代の大きな出来事です。
大震災はのちに、人とのつながりやコミュニティと個人の関係を考えさせ、それを作品化したものも本展でみることができました。
そんな、今までに経験しなかった混乱と不安と、それを隠すような能天気な快楽趣味があいまって、90年代は独特の空気感があったように思います。
その頃のアート作品として、それほど有名でなかったアーティストの作品が並びます。
身近な素材を使って作品にしたり、今につながるバーチャルキャラクターを創作したり、
とくにヴィデオアートは、その画質の悪さが当時の雰囲気をぷんぷん匂わせていました。
時はインターネットが一般に浸透し始めた時代。
じつは私もこの時代にアート作品をいくつか作っていまして、最初はマックのPerforma、あとはウィンドウズ95やXPで、手打ちのHTML(うどんじゃないよ)による手作りホームページに画像やテキストを出していました。
ちょっと説明がむずかしいですが、自分が死んだことにして「若くして亡くなったアーティストの作品をネット上に特別展示」という嘘コンセプトをでっちあげて、WEBサイトをアップしたのです。

小沢剛《なすび画廊「TOP BREEDER Series volume 2」》1994年 より。手作り感あふれる見せ方と(良い意味で)いんちき臭いコンセプトが、この時代の気分か
その嘘コンセプトを含めて、ネット黎明期のコンセプチュアル・アートと呼べるでしょうか?
いずれにしてもおおらかな時代の話です。
それがもとで、2002年、2006年には海外のギャラリーに展示されたりもしたのでした(ちなみに現在はすっかり音楽仕事がメインになっています)。

西京人《ようこそ西京に――西京オリンピック》2008年 より。架空の都市の架空のオリンピック。21世紀に入るとコミュニティとの関わりで生まれるアート活動が見られるようになりその後の時代につながっていく
今回の「時代のプリズム」展は、インディーズのアーティスト作品を集めて展示したとのことですが、なぜか私には声がかからず・・・笑
しれっと展示室に立てかけておいてもばれないでしょうか?

本展は国立新美術館と香港のM+との協働キュレーション。両館長とキュレーター陣
そんな中、私の場合はオウムの事件で、「宗教ってなんだろう」と思い始めたのが、今の仕事につながる要因のひとつになっていると思います。
私が仏像ファンのための仏像Webサイト「日仏会(にちぶつかい)」を立ち上げたのが1996年。
おそらく日本初の仏像ファンサイトであったと思います。
そんな日仏会サイトも、今は役目を終えちょうど今年2025年、ひっそりと閉鎖しました(私は手を引き、後輩が管理していました)。
21世紀も4分の1が過ぎようという中、1989~2010という20年間を振り返ると、「ちょっと前の世界」ではありますが、我々の多くが確かに生きていたリアルな世界であり、現在につながる思想の端緒を見ることができました。
(参考)
私の古いWebサイトはもう消滅していますが、2009年時点の音楽パロディネタをどなたかが紹介してくれています。
https://blog.goo.ne.jp/kunihiko_ouchi/e/88c2fe151e33e9a710fdb7445e088f9d
それでは聴いてください。
宮澤やすみで「Eurythmics"甘夢" Sweet Dreams」(”秘教発掘”と称してパロディにしたカバー動画)
時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010
2025年9月3日(水)~2025年12月8日(月)
国立新美術館 企画展示室1E
詳細:
https://art.nikkei.com/prismofthereal/
■あわせて読む(関連記事)
仏像ファンが見る現代美術「遠距離現在 Universal / Remote」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240312-2/
”恋する気分”か挑発か「ダミアン・ハースト 桜」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220315-2/
教授が悟りを開くまで「坂本龍一│音を視る、時を聴く」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250121-2/
書を聴く、歌を観る「石川九楊大全 状況編」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240709-2/
ヒトガタと人の複雑な関係「ボーダーレス・ドールズ」展
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230704-2/
「18mの視線」ガンダムと大仏のちがいを実感する
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230516-2/
消滅間近の昭和建築、渋谷駅の大改装
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20231010-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:
https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。秋は毎年忙しいはずなのが、今年に限って妙にヒマになっている宮澤やすみです。みなさまお仕事ください。
そんな中、国立新美術館で「時代のプリズム」展が開幕。取材にいってきました。

「時代のプリズム」展ポスター
この展覧会は、1989年から2010年までの日本の現代美術を振り返るものです。
冷戦が終わって、平成が始まる1989年、急速に進むグローバル化の中で、日本を振り返ったり、価値観が多様化する中で自分のアイデンティティを問い直したり、
そういったテーマで展示が進みます。

展示風景。椿昇《エステティック・レボリューション》1990年 ほか
1989年からの20年というと、自分がちょうど学生から社会人になっていろいろあった時代と重なります。
生まれは昭和ではありますが、大人として世間の荒波で動き出したのはまさしく平成のこの頃にあたるので、今回の展示は他人事と思えない、なにか切実なものを感じたのでした。

展示作品の年表は、そのまま筆者の人生に重なっていた
おおまかに1990年代。その最初にバブルがはじけ、しかし若い世代は暗くなるというより、わりとアイロニカルに世間をとらえ、自分たちは自分たちなりに楽しむからといった風潮があったように思います。

展示風景。森村泰昌の油絵風プリント作品《肖像(双子)》1989年 がお出迎え
そのアイロニカルな気持ちが行き過ぎたのでしょうか、後に炎上することになる小山田圭吾氏の言動が雑誌に載ったのもちょうどこのころ。90年代は冗談半分の露悪趣味がまかり通っていたように思います。

展示風景。展示室は禁止の表示があるものを除いて撮影可
渋谷系のこじゃれた音楽がトーキョーに鳴り響く中、阪神淡路大震災とオウム真理教によるテロ事件がこの時代の大きな出来事です。
大震災はのちに、人とのつながりやコミュニティと個人の関係を考えさせ、それを作品化したものも本展でみることができました。
そんな、今までに経験しなかった混乱と不安と、それを隠すような能天気な快楽趣味があいまって、90年代は独特の空気感があったように思います。
その頃のアート作品として、それほど有名でなかったアーティストの作品が並びます。
身近な素材を使って作品にしたり、今につながるバーチャルキャラクターを創作したり、
とくにヴィデオアートは、その画質の悪さが当時の雰囲気をぷんぷん匂わせていました。
時はインターネットが一般に浸透し始めた時代。
じつは私もこの時代にアート作品をいくつか作っていまして、最初はマックのPerforma、あとはウィンドウズ95やXPで、手打ちのHTML(うどんじゃないよ)による手作りホームページに画像やテキストを出していました。
ちょっと説明がむずかしいですが、自分が死んだことにして「若くして亡くなったアーティストの作品をネット上に特別展示」という嘘コンセプトをでっちあげて、WEBサイトをアップしたのです。

小沢剛《なすび画廊「TOP BREEDER Series volume 2」》1994年 より。手作り感あふれる見せ方と(良い意味で)いんちき臭いコンセプトが、この時代の気分か
その嘘コンセプトを含めて、ネット黎明期のコンセプチュアル・アートと呼べるでしょうか?
いずれにしてもおおらかな時代の話です。
それがもとで、2002年、2006年には海外のギャラリーに展示されたりもしたのでした(ちなみに現在はすっかり音楽仕事がメインになっています)。

西京人《ようこそ西京に――西京オリンピック》2008年 より。架空の都市の架空のオリンピック。21世紀に入るとコミュニティとの関わりで生まれるアート活動が見られるようになりその後の時代につながっていく
今回の「時代のプリズム」展は、インディーズのアーティスト作品を集めて展示したとのことですが、なぜか私には声がかからず・・・笑
しれっと展示室に立てかけておいてもばれないでしょうか?

本展は国立新美術館と香港のM+との協働キュレーション。両館長とキュレーター陣
そんな中、私の場合はオウムの事件で、「宗教ってなんだろう」と思い始めたのが、今の仕事につながる要因のひとつになっていると思います。
私が仏像ファンのための仏像Webサイト「日仏会(にちぶつかい)」を立ち上げたのが1996年。
おそらく日本初の仏像ファンサイトであったと思います。
そんな日仏会サイトも、今は役目を終えちょうど今年2025年、ひっそりと閉鎖しました(私は手を引き、後輩が管理していました)。
21世紀も4分の1が過ぎようという中、1989~2010という20年間を振り返ると、「ちょっと前の世界」ではありますが、我々の多くが確かに生きていたリアルな世界であり、現在につながる思想の端緒を見ることができました。
(参考)
私の古いWebサイトはもう消滅していますが、2009年時点の音楽パロディネタをどなたかが紹介してくれています。
https://blog.goo.ne.jp/kunihiko_ouchi/e/88c2fe151e33e9a710fdb7445e088f9d
それでは聴いてください。
宮澤やすみで「Eurythmics"甘夢" Sweet Dreams」(”秘教発掘”と称してパロディにしたカバー動画)
時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010
2025年9月3日(水)~2025年12月8日(月)
国立新美術館 企画展示室1E
詳細:
https://art.nikkei.com/prismofthereal/
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仏像ファンが見る現代美術「遠距離現在 Universal / Remote」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240312-2/
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教授が悟りを開くまで「坂本龍一│音を視る、時を聴く」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250121-2/
書を聴く、歌を観る「石川九楊大全 状況編」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240709-2/
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「18mの視線」ガンダムと大仏のちがいを実感する
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消滅間近の昭和建築、渋谷駅の大改装
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20231010-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:
https://yasumimiyazawa.com


